地方の中小企業が採用できない理由は「知名度」ではない
「うちは知名度がないので」。地方企業の採用相談で、いちばん最初に出てくる言葉です。ただ、20社以上の現場に入ってみると、応募が集まらない本当の理由はたいてい別のところにありました。
地方の中小企業から採用の相談を受けると、ほぼ必ず最初に出てくるのがこの言葉です。「うちは知名度がないので、応募が来なくて」。
気持ちはよく分かります。求人を出しても、大手の隣に並べば見劣りする。ただ、実際に20社以上の採用に実務で入ってみると、知名度が原因で採れていなかった会社は、ほとんどありませんでした。
「知名度がない」は、原因ではなく結論のことが多い
応募が来ない → 理由を考える → 思い当たるのが規模と知名度、という順序で出てくる説明です。だから外れてはいないのですが、手の打ちようがない要因を原因に据えてしまうところに問題があります。
知名度は、短期で動かせません。それを原因だと結論づけた瞬間、打ち手がなくなる。実際には、その手前に動かせる要因がいくつも残っています。
実際に共通していたのは、3つ
採れていない会社に入って最初の1か月で見えてくるものは、驚くほど似ています。
1. 採用の目的が、社内で言語化されていない
「人が足りない」までは全員の共通認識なのに、誰の、どの仕事を、いつまでに引き継ぐための採用なのかが決まっていない。この状態で求人票を書くと、必然的に「明るい方」「やる気のある方」といった、誰にも刺さらない言葉になります。
ここが決まっていない会社では、面接の評価も人によってバラバラになります。誰を採るべきかの基準がないので当然です。
2. 求職者が知りたい順に、情報が並んでいない
多くの求人票は、会社の紹介から始まります。書き手からすれば自然な順序ですが、求職者が最初に知りたいのは「自分がそこで何をするのか」と「生活がどう変わるのか」です。会社の沿革は、その後に読むものです。
順序を入れ替えるだけで反応が変わることは珍しくありません。書いている内容は同じでも、読まれる順番が違うと届き方がまったく変わります。
3. 選考のスピードが遅い
これがいちばん見落とされます。応募から一次面接まで1週間、そこから結果連絡までさらに1週間。この間に、求職者は他社の選考が進みます。
私が入った会社では、応募から内定までの日数を、約1ヶ月から約2週間に縮めました。知名度は1ミリも上がっていません。変えたのは、選考のスピードだけです。
地方企業が大手に負けているのは知名度ではなく、たいてい選考のスピードです。
知名度が効く場面と、効かない場面
公平に言えば、知名度がまったく無関係というわけではありません。効くのは応募の入口、つまり「その求人をクリックするかどうか」の場面です。
逆に、いったん応募してもらったあと——面接で会って、条件を聞いて、入社を決めるまで——の局面で知名度が効くことはほとんどありません。ここは完全に、伝え方とスピードの勝負です。
そして地方企業の採用が失敗している場所は、入口よりもこの後半に集中しています。応募が数件しか来ていないのに、その数件を口説ききれずに全部逃している、というケースを何度も見ました。
地方企業にしかない武器を、たいてい使っていない
大手にできて地方の中小企業にできないことは、確かにあります。ただ逆も同じで、地方の中小企業にしかできないことがあります。
- 社長が直接会って口説ける(大手では最終面接まで役員が出てこない)
- 意思決定が速い。その気になれば面接から内定まで数日で出せる
- 仕事の全体像が見える。分業されていない分、任せられる範囲が広い
- 生活そのものを提案できる。通勤時間、家族との時間、住居費
これらは求人票の条件欄には現れません。だから伝わらないまま終わる。ここを言葉にできるかどうかが、地方企業の採用の分かれ目だと思っています。
まとめ
地方の中小企業が採用できない理由は、知名度ではありません。採用の目的が言語化されていないこと、求職者の関心順に情報が並んでいないこと、選考が遅いこと——この3つが、私が見てきた現場での共通項でした。
いずれも、明日から動かせる要因です。知名度と違って。
