「うちには何もない」と言う社長に、必ず聞く5つの質問
採用支援に入って最初にやるのは、社長へのヒアリングです。「うちには特にアピールできるものがなくて」と言われることが多いのですが、聞き方を変えると、たいてい材料は出てきます。実際に使っている5つの質問です。
採用の支援に入って最初にやることは、求人票を書くことでも媒体を選ぶことでもなく、社長に話を聞くことです。訴求の材料は、外から持ち込むものではなく、社内にすでにあるものを掘り出すものだと思っています。
ただ、素直に「御社の強みは何ですか」と聞くと、9割の会社で「特にないんですよ」と返ってきます。だから、聞き方を変えます。
「何もない」のではなく、言語化していないだけ
自社の当たり前は、中にいる人ほど見えません。毎日やっていることを「強み」だと認識するのは難しい。「強み」を聞くのではなく、事実を聞く。これが基本方針です。
実際に聞いている5つの質問
1. 直近で辞めなかった人は、なぜ残っていますか
離職理由を聞く会社は多いのですが、定着理由を聞く会社はほとんどありません。長く残っている人が何に価値を感じているかは、そのまま求職者への訴求になります。しかも実在の人物の話なので、盛りようがありません。
2. お客様から、いちばん言われる褒め言葉は何ですか
採用の話をしているのに、あえて顧客の話を聞きます。顧客に評価されている点は、その会社が実際に強い部分だからです。「対応が速い」「無理を聞いてくれる」——こうした言葉は、そのまま仕事の性質の説明になります。
3. 社長が今いちばん時間を使っている仕事は何ですか
これは採用の目的をあぶり出す質問です。社長の時間を食っている業務こそ、本来引き継ぐべき仕事であることが多い。「誰を採るか」の答えが、ここに入っています。
4. 前回入社した人は、入社前に何を不安がっていましたか
次に来る求職者も、ほぼ同じことを不安に思います。先回りして求人票に書いておけば、それだけで他社と差がつきます。不安に事前に答える会社は、それだけで誠実に見えます。
5. この会社で働くと、生活はどう変わりますか
地方企業では、これがいちばん効く質問です。通勤時間、家族と過ごせる時間、住居費、子どもの環境。都市部の企業には逆立ちしても出せない条件が、ここに眠っています。仕事の内容より、生活の変化のほうが決め手になる人は確実にいます。
自社の強みは「強みは何ですか」と聞いても出てきません。定着理由、顧客の褒め言葉、社長の時間の使い道——事実を聞けば出てきます。
出てきた答えを、そのまま求人票に載せてはいけない
ヒアリングで材料が出たあと、そのまま貼り付けると失敗します。社長の言葉は社内向けの文脈で語られているので、外の人には前提が通じないからです。
やるべきことは、出てきた事実を、求職者が自分の生活に置き換えられる形に翻訳すること。「残業が少ない」ではなく「18時に退社して、子どもの夕食に間に合う」まで具体化する。ここまでやって、ようやく訴求になります。
私がこの5つの質問で実際に材料を掘り出せた割合は、7割くらいです。
まとめ
「うちには何もない」と言う会社に足りないのは、強みではなく言語化です。強みを直接聞かず、定着理由・顧客の言葉・社長の時間・前回入社者の不安・生活の変化の5点を事実として聞く。
そして、出てきた材料は必ず求職者の生活の言葉に翻訳してから使うこと。この工程を飛ばすと、せっかく掘った材料が伝わらないまま終わります。
